麻酔が効かない。伝達麻酔をするときの基準は?

【質問】
いつも拝読しております。ありがとうございます。

ご多忙中大変恐縮ですが、ご教授願えないでしょうか?

下顎大臼歯の処置の際、伝達麻酔をするときの基準は何かおありでしょうか?

自分は、抜髄なら伝達麻酔をするのですが、形成でも浸潤麻酔(歯肉溝にも入れます)だけでは効かない事が多々あります。

一旦痛みを感じると、閾値が下がってしまって追加しても効かせるのが難しいですし、その場合は無理せず日を改めています。

【回答】
〇〇先生

いつもインターネット歯医者さんをご活用いただき誠にありがとうございます。

歯科医院は痛いといらっしゃる患者さんが多いわけですが、痛いと麻酔が効きにくく、処置が大変ですよね。

私の伝達麻酔を打つ事にする基準についてですが、

まずは、通常の麻酔で聞かなければ、追加の麻酔を打つ際に骨孔を探して刺入してみます。

骨孔に入れば、そのまま効きますので良いのですが、骨孔に入らない場合など、刺入点が多くなると、そちらから麻酔が漏れてしまい骨の中にある歯まで麻酔液が届かなくなるので、

追加の麻酔を半分から一本打った後も効かなければ、歯根膜注射を行います。

それでも効かない場合にのみ、伝達麻酔をする、といった具合です。

埋伏抜歯の際は、通常の麻酔を打つ際に、遊離歯肉が上部まで来ている時や、半埋伏歯で歯肉溝から麻酔が漏れたりして、あまり効いていなさそうであれば最初から伝達麻酔をする事もあります。

ただ、伝達麻酔は出来るだけしたくないというのが本音です。

といいますのも、私の友人が大学病院にて、局所麻酔が効かなかった為、伝達麻酔をされたのですが、その後下顎管の神経麻痺が起こったからです。

もう10年くらい前の話ですが、当時、私はお盆休み中で実家の九州に帰省していた為、友人から歯が痛いとヘルプが来たのですが、診ることが叶わず、別の友人の勤めている大学病院をご紹介致しました。

その後神経麻痺が出てしまい、3ヶ月くらい経ってから症状が緩和し、6ヶ月くらいしたら症状がなくなりました。

双方が友人であったこと、大学病院であったので、リハビリテーション科の処方や対応がしっかりしていたことなどで、大事には至らなかったのですが、

一般開業医でそんな事があったら怖いなと思いました。紹介した友人も口腔外科で腕は確かであったので、私も起こす可能性があると考えたのです。

実際、その友人に聞いたところ、かなり少ない確率ではあり、ほとんどが治っていくが、麻痺が出る可能性はあるとのことでした。

なので、実はですが、私はここ7.8年は伝達麻酔をしていないです。

私も元口腔外科なので、昔は伝達麻酔ありきの考え方をしていたのですが、神経麻痺が怖くなってやめてから、結構局所麻酔だけでいける事にも気付きました。

まず、イメージとして、骨の中にある歯根の先に麻酔液が到達しさえすれば、麻酔抜髄の際なども露髄までは行けます。(ファイル痛は残ることがあり、髄腔内麻酔が必要な事はありますが)

その為の、

まだブログには載っていない、麻酔の効かせ方として、二回目の歯肉鏡移行部(遊離歯肉)への麻酔で、外側に膨れますが、それを指で押して、骨の中に浸潤するようにしてみて下さい。

その後、3回目の付着歯肉への麻酔の際に、しっかりと抵抗を感じる事を確認する事が重要です。

電動麻酔ですとわかりづらいかも知れないので、その時は手動でやるとわかりやすいです。

あまり抵抗なく、麻酔が打てている場合は、骨の中に入らず、外に逃げてしまっていますので注意です。

それらを感じ取れるのも手用の麻酔の良い点です。

3回目の麻酔では、骨孔に入ればラッキーなので、少し力をかけて、針がスブッと骨の中に入るか試してみます。

骨孔に入らなかったとしても、付着歯肉(麻酔液を入れていっても膨らまない歯肉)に打てていれば、5分程麻酔が浸潤するのを待てば、これでほとんどの場合で効きます。

しかし、

あまり付着歯肉がない人、骨が固い、骨隆起などがあり、骨の中の歯根まで距離があるなどの時は、効かない時があります。

その場合は、歯根膜注射を行います。

歯根膜注射も歯根膜炎を引き起こす時がありますので、あまり最初から行ないませんが、歯根膜注射であれば、骨や歯肉に影響されません。

また、歯根膜炎も神経麻痺よりはマシという考え方から、そこから伝達麻酔をするのではなく、歯根膜注射をきちんと効かせる事に専念しようと私は考えました。

歯根膜注射がきちんと歯根膜腔に入っていっているかの目安ですが、

その際にはものすごい抵抗があります。

なので、手用では握力が足らない、また、電動麻酔の場合は、圧がかかりすぎて止まってしまうなどがありますので、

下の写真の器具を私はよく使います。

<歯根膜注射器>
歯根膜注射器

この器具ですと、ものすごい圧をかける事ができます。

カートリッジが割れる程です。

ただ、カートリッジを割ってしまってはいけませんね。

カートリッジが割れる場合は、一気に入れようとした時なのですが、歯根膜へは少しずつしか入っていきません。また、歯根膜腔はそんなに体積がないので、少量で効きます。

なので、一度カートリッジを割るとこのくらい力をかけると割れるのかと分かると思いますので、その手前くらいの力で止めて、そのまま維持します。

すると最初はすごい抵抗があるのですが、だんだん入っていきます。

その抵抗の違いなどもこの器具では感じとる事が出来ます。

歯根膜炎も怖いので、入れ過ぎない事と麻酔抜髄の場合などは咬合を落としておくとよいと思います。

歯の中の神経は、三叉神経が歯の中に入っているわけですが、その入り口である根尖に麻酔液が到達していれば、

つまり、

歯根膜腔に麻酔液が回りさえすれば、必ず露髄できるところまでは麻酔が効きますし、その後に歯髄腔麻酔が必要となっても、そこまで痛みなく行うことが出来ます。

お試し下さいませ。

臨床にて、麻酔が効かないという問題は多々あるかと思います。

大変良いご質問をいただきました。ありがとうございます。

同じようなお悩みを持たれていらっしゃる歯科医師先生方も多くいらっしゃると思います。

インターネット歯医者さん~実践編~へ掲載させていただいてもよろしいでしょうか?

よろしくお願いいたします。

ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。

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